浜町凹SHIP

 大分市内浜町に新築の住宅です。
現在住んでいるお宅の一部が、市の住環整備事業の道路拡張にあたり、全解体して建て直すことになりました。
敷地が南北に細長く、狭いので(31.7坪)設計者にとっても、クライアントにとっても「思い切ること」が要求されました。
 広い道路に接する西面が広く、建物の三面すべてが人の目にさらされ、さらに西日がモロに当たるという悪条件を、前面に設けたアルミ製のルーバーを設けるというアイデアで克服しています。一見すると建設費の無駄に思えるようなルーバーによって、実は往来からのプライバシーを守り、西日を避けると同時に、内側からは外に向かって開放された空間構成を可能にしています。また、ルーバーで囲われたバルコニーからは、道路を隔てた神社の桜や、季節のお祭りを眺められるように、2階窓の部分のみ一段飛ばしのルーバーとしています。それはまた、建物の外観を印象付けるデザインにもなっています。
 プロジェクト名の「浜町凹SHIP(ボコシップ)」は、プレゼンの際の平面と立面イメージから『凹(ボコ)』が生まれ、クライアントとの飲み会の際に「そういえば船の形に似てるね」という発言から『大洋を航行する船(SHIP)』が生まれ、建設地も住吉泊地に近いことから『浜町凹SHIP(ボコシップ)』と名付けられました。(ちょっと安直ですが・・・)

 2階に生活の基盤空間を持ってきているため、帰宅時の荷物(買い物袋)や日々のゴミ出しの際にわざわざ1階まで降りなくていいように、階段室(荷物用)とバルコニーの一部(ゴミ出し用)に小さな吹抜けをつくり、滑車を使って荷物の上げ下げができるようにしました。この案にはクライアントも面白がってくれ、楽しみにしていただいています。

 どの住宅にも言えることですが、現実的にはご予算の問題や、それを上回るようなご要望の数々等、クリアしていかなければならない問題が束になって向かってきます。でも、クライアントと設計者の信頼関係がしっかりしていて、尚且つ、プランにいい意味での不思議さだとか遊び心だとか、使いやすさがあれば、自然にステキな建物ができるんじゃないかと思っています。
 目指すのは、設計者とクライアント、それにビルダーの三者がひとつのものを創る楽しみを共有できる建物なんだけどなあ、などとぼんやり考えています。

■敷地面積:104.87u(31.72坪)
■面積:1階 67.01u
    2階 67.90u
■延床面積:134.91u(40.81坪)
■坪単価:約52万円
■2011年4月竣工

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